2008年 6月 2日発行
━━☆ 夢現 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ゆめげんクリニック・プロジェクト メールマガジン Vol. 10
http://jin-i.com/yumegen
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みなさま、こんにちは。
ゆめげんクリニック・プロジェクト事務局の中山です。
本メールマガジンは、「ゆめげんクリニック・プロジェクト」の
ホームページまたはメルマガポータルサイト「まぐまぐ」から
ご登録いただいたみなさま及びパートナー企業・医療機関のみなさま、
そして、当法人事務局スタッフが名刺交換させていただいたみなさまに
お送りしている情報メールマガジンです。
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● もくじ
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【1】はじめに
【2】今月のテーマ:旅行医学(第3回:渡航先でかかる病気)
【3】ゆめげんドア
● 編集後記:旅先での根拠のない自信
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【1】はじめに
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みなさま、
「旅をしない若者たち」
という言葉をご存知ですか。
私はこの言葉を
NPO法人政策学校 一新塾(注)の塾生で
自転車で世界一周された木舟周作さんが
書かれている記事で知りました。
確かに自宅周辺だけの生活、
更にはパソコンの画面を眺めるだけの生活
というのは、
好奇心と冒険心に満ちていておかしくない
若い世代の生活スタイルとしては
物足りない気がします。
しかし、
上の世代の「好奇心」「冒険心」とて
いつも褒められるものでもありません。
とんでもない好奇心と気の緩みから、
自分だけでなく
愛する家族にとっても
取り返しのつかない結果を
もたらしてしまうことがあります。
さて、今回のゆめげんメールマガジンのテーマは、
この旅の行き過ぎた「好奇心」「冒険心」
と関連しています。
旅行医学の第3回「渡航先でかかる病気」の中から、
『HIV/AIDS 感染症』のお話です。
ご一読いただければ幸いです。
(注)NPO法人政策学校 一新塾: http://www.isshinjuku.com/
*本メルマガ発行者の「くに」「よし」は
二人ともここの塾生です。
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【2】今月のテーマ: 旅行医学(第3回:渡航先でかかる病気)
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■ バンコクでのある風景
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アフリカのマラウィ共和国に住んでいたとき、
日本に一時帰国するため
タイのバンコクを経由しました。
次の飛行機の時間まで数時間あったので、
マラウィからタイまでの
10時間以上のフライトの疲れを癒そうと、
空港内にある「タイ式足つぼマッサージ」
に行きました。
マッサージの部屋は、
リクライニングの椅子が一列に並べられていて、
10席ほどでした。
お客さんは年齢が20−60歳代の男女、
様々な人種の方がいました。
スタッフはタイ人の女性でした。
ちょうど、空きが出たところだったので、
私は5分ほど待つだけでマッサージを
受けることができました。
「痛かったら言ってくださいね〜」
の声と同時に足首からマッサージが始まりました。
長いフライトで足は棒のように重くなっていたので、
最高のひと時でした。
マッサージが後半に差し掛かった頃、
アジア系の50台と30歳台の男性ニ人が
私の両隣の椅子でマッサージを受け始めました。
しばらくすると日本語で会話を始めたのです。
「いや−、タイ人の女性はいいよなあ。」
「そうですね。」
「帰るときなんて、○○ちゃんが「行かないで」って、
泣くんだぜ。たまんないよな。」
「病み付きですよ−。」
もっと具体的な内容も交えて、
部屋中の人が聞こえるほどの大声で、
まるで人に聞いて欲しいかのように
会話をしているのです。
それはタイで風俗に行った話でした。
見た目は極々普通のサラリーマン。
どちらかというと、マイホームパパのように、
(私の感覚によると)とても風俗に行きそうにない
感じの人たちで、
「そんな人が風俗に行くんだ・・・」
私には衝撃でした。
というのも、私にはその前に
ある忘れられない体験があったからです。
■ 喜びの妊娠が悲しみと不安に
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日本で感染症科で働いていた時のことです。
ある日、妊娠で産婦人科を受診された女性が
私の元に来られました。
妊娠に伴う基本検査の結果が、
HIV陽性だったのです。
彼女はごく普通の家庭の主婦でした。
どこから感染したかについては身に覚えがなく、
陽性と聞いて随分ショックをうけていました。
さらに、夫も陽性だとわかりました。
更には夫が風俗で感染してきたものと知ります。
信じていた夫に裏切られた気持ち
そして、病気への恐怖で、
かわいそうなほど落ち込んでいました。
妊娠という喜びの知らせが、
こんなにも辛い結果をもたらしてしまうとは・・・
この経験はしばらく私の頭から離れなかったです。
■ ふたたび、バンコク
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私の足つぼマッサージが終わり、部屋を出るとき
先の男性たちの会話で最後に聞こえたのは
「次が楽しみだな!」
でした。
タイでは、1984年初めにHIV陽性患者が発見され、
その後、ゲイ、麻薬の針、性産業を通じて
HIV/AIDSが広まった国の一つでした。
1989年にはバンコクの性産業に従事している女性の
実に“44%”が
HIVに陽性であることがわかりました。
その後、国を挙げての取り組みが功を奏して
2005年からは新規感染者の人数は減っています。
しかし、私が訪問した2003年は、
年間25,000人が新たにHIVに感染し、
そのうち80%が性行為による感染
という状況でした。
■ 「知ること」の重要性
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もちろん、コンドームを使って
感染予防しているかもしれませんが、
このような状況の旅先で
性産業を気軽に訪れるなんて、
私には理解できなかったのです。
性行為による感染症はHIV/AIDSだけではありません。
梅毒やりん病、性器ヘルペス症、クラミジア感染症など
多種にわたります。
また、病気によってはすぐに治るものから、
重篤な後遺症を残す可能性があるものまであります。
渡航先では、日常生活からの開放感から、
無防備な性交渉を行いやすいという報告もあります。
しかし、渡航の前には
少なくとも現地の感染症情報を知ることが大切です。
そして、その上で自分の将来、大切な家族のために、
『男性も女性も』
自らの行動を律して、渡航先での病気には
十分に注意していただきたいと思います。
(くに)
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【3】ゆめげんドア:
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今月のテーマについて更に詳しく知りたい方は、
次のウェブサイトをご参考にしてください。
■ 厚生労働省検疫所 旅行者のための感染症情報
http://www.forth.go.jp/tourist/worldinfo/h05_ind_index.html
■ アバンチュールは性感染症への誘い?:
英国男性のHIV感染者、7割が海外での性交で感染
(日経メディカル・オンライン 2004.7.28)
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/archives/322201.html
■ 「旅をしない若者たち
−若年層の海外旅行離れが暗示する日本の将来的危機−」
木舟周作
http://www.ohmynews.co.jp/news/20080219/21118
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● 編集後記:旅先での根拠のない自信
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ゆめげんクリニック・プロジェクトの
メールマガジン第10号は
いかがでしたでしょうか。
それにしても、旅先ではいくら好奇心や冒険心、
開放感があるからとはいえ
日常生活では決してとらないようなリスクの高い行動を、
なぜ、平気でとってしまうのでしょうか。
いろいろ理由は考えられると思いますが、
一番大きいのは、
「自分だけは大丈夫」
という根拠のない自信が
あるからではないでしょうか。
この根拠のない自信、
仕事をする上で、また、人生の困難に直面したとき
「分からないけれど、絶対、何とかなる、大丈夫!」
という気持ちをもって取り組む時にはとても大切です。
自分を信じて歩み続ける原動力になるからです。
しかし、旅先での安全や病気に対する
根拠のない自信ほど怖いものはありません。
絶対、何とかなりませんし、全く大丈夫ではありません。
まず、本当の好奇心や冒険心は、
自分や自分が大切にしている人の命を
決して危険な状況に置くようなことをしないと思います。
旅先での安全と病気に対する本当の自信は
・何がリスクなのか
・何をしてよくて、何をしてはいけないのかを
しっかり知ることからしか生まれないような気がします。
それでは次号は、
旅行医学の中から「予防と対策」について
6月23日にお送りする予定です。
次回もどうぞお楽しみに! (よし)
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