2020年−2022年の新型コロナ感染拡大期以降、それまで我が国の地域医療や各医療機関や医療者がおかれてきた厳しい環境下にも増して、心無い言葉を匿名でネット上に書き込みをされてきました。
国が決定する医療政策レベルの問題と医療現場レベルで「できること・できないことの区別」の理解が不十分なのではないか、と思われる方々によるものと推察しています。
医師やスタッフが目の前で怒鳴られたことも一度や二度のことではありません。コロナ対応で医療スタッフがギリギリの状況の中、ご自分の思うような対応でなかったからでしょうか、電話で「ネットに書き込むぞ!」と脅されたこともあります。複数の偽名を使って脅しのメールが届いたこともあります。いや、まだ直接、ご指摘いただくのであればいいほうです。不満やネガティブなコメント、評価を後日ネットにそっと書き込むぐらいなら、ご自分の心身の健康のためには、不満を直接伝えてくださった方がいいのではないか、と思うことも少なくありませんでした。
もちろん、ほとんどの患者さんは優しく励ましの言葉をくださり、マスクをくださったり、お弁当の差し入れをくださったり、それらのお心遣いに私たちがどれだけ勇気づけられたかわかりません。だからこそ、今まで、どうにか続けてこられた、と思います。本当に心から感謝しております。
ただ、次の新たな感染症の拡大、これから、に対してこれまでと同じようにがんばれるか、と問われると自信を持って「はい」と答えることは難しいです。それほど、たとえ少数の人たちによるものとわかってはいても、ナイフのような言葉、書き込みは、心の奥深く、長期間にわたり、わたしたちを傷つけ続けています。
医療者の役割は人をケアすることです。しかし、医療者も人間、ケアが必要です。医療者はみなさんの"ことば"でケアされます。一人一人の行動が、善意の医療者のみならず社会全体にもたらす長期的な結果について想像力を働かせていただき、もっとお互いの立場を思いやる優しい社会になることを心から切に願います。 (2023年9月記)