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医療への想い

 私は、これまで教育と国際協力の分野に従事してきました。医療については、それを提供する側の立場ではなく、患者として、または患者の家族、すなわち受ける側として関わってきました。したがって、正直に告白すると、医学や医療の分野については全くの素人です。

 そんな素人が、なぜ医療に深く関わろうとしているのか。

 この「ゆめげんクリニック・プロジェクト」に対する想いのベースには、家族や開発途上国で出会った子供、友人たちとの死別があります。

 私は、ある田舎町の、薪で五右衛門風呂を焚くような家で(笑)、三世代が一つ屋根の下に暮らす家庭に生まれ育ちました。しかし、12歳から15歳の三年の間に、父母、祖父母の四人を病気で亡くしました。一年間に三回、家族の葬式を出したこともあります。家族が長期間入院している間、そして死を迎える時の家族の精神的な不安やストレス、肉体的な疲労については、私なりに経験してきました。病気が心とからだに対して与える影響は、病気を患っている本人だけでなく、その家族全員に及ぶ。だから、医療には、その病気や本人だけでなく、家族も含めてケアする家庭医的な視点が重要だと考えるようになりました。

 開発途上国と呼ばれる地域における教育の仕事では、そこでの私の生活を支え、笑いと生きる喜びを与えてくれた子供や教え子、そして同僚たちの死に、何度も直面してきました。アフリカのある国に赴任していた時は、とてもかわいがっていた2歳の女の子がマラリアを罹って二日後に亡くなってしまい、そのあまりの不条理さに、しばらく何も手がつかなくなったこともあります。教育を受ける前提条件に、子供たちの健全な心身、そして親や家族の健康、さらにはそれを取り巻く社会環境の健全さが不可欠である、と実感してきました。

医療とは、患者の人生と向き合うこと

 人を救うこと、それが医療の目的です。人を救うとは、その人の人生と向き合うこと。人の人生と向き合うとは、その人の死と向き合い、生の価値を共に問い直すことだと思います。これまでの経験で、そんなことを考えてきました。

岐路に立つ日本社会

 翻って今日の日本を見ると、医療制度が大きな岐路に立たされています。これまでの日本の医療は、伝統的に「医は仁術なり」という医療者の高い職業倫理に支えられてきたと思います。しかし、現在、急激な社会環境や人々の意識の変化の中で、医療者や政府だけでなく、医療について、そして人間の生について、私たち一人一人が問い直し、どのように関わっていくべきか、深く考えることが求められています。

 今回、妻である久仁子が、クリニックを通じて社会との関わりを深めたいという意志を固め、志を表明いたしました。私は、家族として、そして夢を共有する同志(パートナー)としてその心意気に協力したいと思い、この「ゆめげんクリニック・プロジェクト」に参加することにいたしました。

当たり前のことを、心を込めて

私たちは偉大なことはできません。
偉大な愛で小さなことをするだけです(マザー・テレサ)

「小さなこと、でも当たり前のことを、心を込めてひとつひとつ静かにこなしていく・・・」

 みなさんの協力を仰ぎながら、そんなプロジェクトにしていけたらと願っております。

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